蝋箋
蝋箋は、唐紙の仲間です。
唐紙では、文様は雲母を膠でといで使いますが
蝋箋は、文様を擦り出して表現しています。
下地は唐紙と同じように胡粉を引いてつくります。
そうして下地の出来上がった紙を、表を上にして
木版の上に乗せます。
それから、猪牙(ちょき)を使って、丁寧に擦ることにより
文様の部分が現れます。
写真はイノシシの牙を、道具として加工したものです。
この形で販売されています。猪牙です。
猪牙で擦るときに少しだけ木蝋を付けます。
そのまま擦っても、紙の表面がむけてしまいうまくいきません。
木蝋をほんの少し付けることにより、滑りがよくなるのと
紙の面に光沢がでます。
もう30年近く使っていますが、ほとんど形は変わっていません。
それくらい、少量しか付けません。
この蝋を使うことで、不思議と墨をはじくことがありません。
新しい木蝋を使って試験すると、濃い墨は大丈夫なのですが
薄い墨や、かすれた部分が今ひとつです。
専門の方に見てもらっても、ただの木蝋です。
祖父の代から受け継がれたものなので、大切に使っています。
写真は、寸松庵色紙の亀甲紋です。
円を描くように、丁寧に擦っていきます。
一枚の料紙を仕上げるのに、かなりの時間を要します。
一番手間のかかる料紙でしょう。
ただ根気よく、根気よく、丁寧に、丁寧に、です。
蝋箋を使った古筆は、ほかに巻子本古今集や道斉集などがあります。