かな料紙 - 小室かな料紙工房 -

伝統的製造方法で、書道用かな料紙を製作しています。このWebサイトでは、製作に係わる職人の立場から、かな料紙の作り方や種類など説明したいと思います。

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工房日記の記事一覧

型砂子

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型砂子についてお話をしようと思います。

写真は源氏物語絵巻の詞書の料紙、「夕霧」の
下の方にある型砂子です。

原本の写真は黒くなっていますが、
もともと銀の砂子が変色したものです。

使用する砂子は、一番細かいタイプのものです。
詳しい作り方は、以前の投稿でご覧ください。

  https://kanaryoshi.com/997/

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渋紙に、原本の線を転写して型紙を作ります。

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型紙はある程度示しておきます。
湿したタオルを乗せて全体に平均に湿るようにします。

そうしないと紙に乗せた時に、膠を引いた紙の水分を
吸ってしまい波打って隙間が出来たりします。

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膠とフノリをといで薄めたものは、前回と同じです。
同じように刷毛で紙の表面に引きます。
茶色で撮影したものは、砂子が分かりにくかったので

ここから藍色の染紙に替えました。

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型紙を乗せます。

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砂子を入れた竹筒で、端から撒いていきます。
砂子が細かいので、竹筒の出口には布が張ってあります。
撒き終えたら、前回と同じように押さえ紙を乗せて
手で砂子を押さえます。

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型紙を外してから、乾燥させます。

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型の違う型紙で撒いたものです。

箔を撒く その4

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今日はトメドーサについてです。

箔を撒いてから、よく乾かし、それから「トメドーサ」を引きます。
ドーサ液については、2013年7月12日の投稿をご覧ください。

     https://kanaryoshi.com/518/

ニジミを止めるためのドーサ液に比べて
ミョウバンの量を半分くらいにします。
また、さらに薄めに合わせます。

これも加減は、職種によって変わると思われますので
参考という事にして下さい。

写真は、箔を撒いてから一度良く乾かした紙に
トメドーサを引いているところです。

トメドーサを引いたら、そのまま乾かします。

【トメドーサの効用】
 〇箔がよりよく定着する。
 〇箔上の墨の乗りが良くなる。
 〇銀の変色を遅らせる。

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特に銀はそのままだとすぐに変色がはじまります。

写真は、銀箔を紙に平押ししてから10年経過したものです。

片方にだけトメドーサが引いてあります。
そのままだと数カ月で色が変わっていくのが分ります。

銀箔はそれでも少しづつ色が変化します。
古筆の中でも源氏物語絵巻の詞書の料紙は
800年を経て、かなり銀箔が黒くなっています。

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写真は、私の祖父の手による料紙です。
もう50年以上にはなると思います。

だいぶ黒くなってきています。

変色は周りの環境にもかなり影響をうけますので
保存の仕方にもよるのだと思います。

箔を撒く工程を4回に分けて投稿しました。
大まかな作業の流れをおわかり頂けたでしょうか。

箔を撒く その3

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今回は、紙に薄めた膠の溶液を刷毛で引いて
荒い砂子を撒いてみようと思います。

荒い砂子の作り方は2014年1月28日の投稿をご覧ください。
   https://kanaryoshi.com/987/

写真は、膠の溶液を薄めたものが
バットに入っています。

薄める、と言ってもどのくらいかわかりにくいですね。
普段は、量ったことはありません。

もう一回作り直して、今度は量ってみました。
原液は三千本膠一本(約12g)にフノリ(1.2g)を
200ccの水で溶かします。

濾したこの原液を25ccに対して、お湯を
350cc~450ccくらいの感じで薄めます。

数字にするとこのくらいでしょうか。
あくまでも目安ですので、実際に撒いてみて
濃くしたり、薄くしたりと調整します。

刷毛は馬の毛のものを使っていますが
羊毛の水刷毛を使っても大丈夫です。

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分りやすいように、写経用の紫紙に
撒いてみます。

刷毛に適量を含ませ、横、縦、横、縦、位の感じで
紙に薄めた溶液を引きます。

含ませる量は数字では表せませんので、
適量です。

含ませる量が少ないと刷毛が
動かし難くなります。

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竹筒に入れた荒い砂子を全体に
撒きます。

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そのあと、押さえ紙を乗せて
上から、掌で擦るようにして押さえます。
押さえた紙に砂子がたくさん付いてしまう
時は、溶液の付け過ぎ、または濃すぎる
事が原因です。

紙は色々なものが使えます。
写真は、ボーガスペーパーです。
くしゃくしゃと丸めて、クッションに使う
為の割安の再生紙です。

新聞紙でも大丈夫です。
ただ最低でも半年より古いものを
使って下さい。
インクが落ち着いて料紙を汚す
確率が少なくなります。
理想は3年くらい。

出来たら全開に広げたものを
重ねて押しをします。
さらに直径20㎝くらいに巻いて
保存しておきます。
しわが比較的きれいになって
使いやすくなります。
新聞巻が何本かいつも作り置きして
あります。
何にでも使えてとても重宝します。

すみません。
話がそれました。

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写真は、荒い砂子、中くらいの砂子、細かい砂子
を撒いたものです。
砂子を作るフルイの目の大きさによって
変わります。

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荒い砂子を使った古筆の料紙の中で
写真は、筋切の料紙と大字朗詠集の
料紙です。
どちらも、金と銀の荒い砂子が撒かれています。

箔を撒く その2

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今回は、箔を撒くための竹筒のお話です。

箔を紙の上に撒くために、竹筒にいれてから
作業します。

砂子や切箔は数種類の大きさが有るので
竹筒に張る網目もそれに合わせて大きさを
変えます。

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糸は、基本的にどんなものを使っても
大丈夫ではないかと思います。

写真は、絹本(絵絹)の切れ端を先のとがったもので
ほぐしているところです。

この糸を一本づつ筒の出口に張ります。

雲母摺り用のタンポを張り替える時に
必ず切れ端が出るので、利用しています。

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これは、荒い砂子を撒くためのものです。


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これは、切箔の大切を撒くためのものです。

張ってから、実際に使ってみるまでは
良いのかどうかは、わかりません。

箔が出過ぎても、その逆でも
使いにくい道具になってしまいます。

その時は作り直しです。

鹿皮が巻いてあるのは、竹筒を置いたときに
糸が直接当たるのを防ぐ為です。

持って置いての繰り返しですので
置いたときにどうしても網の面が下になり
台に当たり、糸が切れやすくなります。

箔を撒く その1

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今日から金箔、銀箔を撒いて料紙を装飾するお話を
数回に分けて投稿しようと思います。

まず箔を定着させる為の接着剤の役目をする液を
作ります。

使用する紙にはドーサが引いてあり、にじまないように
してあります。
箔の装飾で、ドーサはとても大切です。
ある程度ドーサが効いていないと
箔の定着が良くありません。

どの程度?と言う質問にはっきりとした言葉で
答えられません。
すみません。

良い加減を何とかうまく伝えたい!
と思うのですが。

話を進めます。

ドーサが引いてある紙に箔を撒く、と言う状況で
お伝えしようと思います。
いろいろな紙を使うことになると思いますが
すべてドーサが引いてあり、にじまない紙を使っています。

写真は三千本膠とフノリです。
三千本膠が、一本でだいたい12gくらいです。
フノリは目安でその1割くらいの量です。

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三千本膠はこのままでは溶かしにくいので

布に包んで折ります。
気を付けないと、けっこう鋭い破片になります!

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それからコップに1杯くらいのお湯を入れて
湯煎して溶かします。
これくらいの量でしたら、それほど時間はかからないと
思います。

フノリと膠を混ぜた溶液は、傷みやすいので
少量をその都度作るようにしています。

溶けたら布で濾して、箔を撒くための接着剤の
原液の出来上がりです。

筋切(すじぎれ)の料紙

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筋切の料紙を作っています。

染め紙に荒い砂子を撒いてから、飛び雲を書き込みます。
写真は、線を入れて乾燥させているところです。

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もともとは歌合せの横に線の入った料紙を
90度回転させて、縦に線がくるようにして使っています。

線を料紙の景色として見立てています。
原本をみると、飛び雲が縦になっていたり、
描き模様が横向きだったりしています。

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線は銀泥を膠で解いたものを、カラス口で引いています。

カラス口は製図の機械化に伴い、
今はほとんど作られていないと聞いています。

大切な道具です。

木版を並べて

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唐紙の雲母摺り(きらずり)をしています。

通常使う木版の種類が30くらいあります。

木版は摺る前に充分湿しておかなければならないので
一度全体を軽く洗って、濡れたタオルをのせておきます。

摺っているときは、次に使う木版がタオルののった状態で
待っています。

使い終えた木版は、すぐに洗って乾かします。
写真は、ある程度仕事が進んで、洗い終わった木版が
並んでいるところです。

まだ雲母がだいぶ付いているものがありますね。
写真を撮ってみると見ている以上によく解ります。

英訳

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かな料紙のウェブサイトを英訳して頂き
今月から公開になりました。

ウェブデザイナーさんが、探して下さり
驚くことにボランティアの方に翻訳をお願いしました。

とても熱心に取り組んで下さり、立派な英語版の
サイトになりました。

人と人のつながりのありがたさを実感しています。
デザイナーさんを紹介して下さった方から始まり
不思議なご縁の連続でここまで出来上がりました。
ただただ感謝!です。

もう一つ、スマートフォン対応になりました。
スマホでも快適に見ることが出来ます。
私はいまだにガラケイなので、写真は妹のスマホです。

世界中の多くの方に見て頂ける事を願って。
今年も頑張ってブログとサイトの更新を続けます。

銀泥を

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写経用の藍紙に銀泥で文様を摺ってみました。

実際に料紙として使われることは、ほとんどありません。

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銀泥が割とたくさん必要なので 狭い範囲で摺ったものを撮影しています。

画像はかなり拡大になっています。 その分、荒が目立ちますね!

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写経用紙の天地の装飾など、実際には文字を書かない部分の装飾に
使えると思います。

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工芸品などへの応用を考えています。

猪牙(ちょき)で丁寧に磨くと、 銀泥、金泥で書かれた経文と同じように、
輝きが出てきます。

飾り扇 

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飾り扇用に料紙をつくりました。
普通に使う扇面は、ここまでの装飾は必要ないかと思います。
個人的には一番手前の唐紙が好きです。
でも、飾るにはちょっと地味。

扇に仕立てた時にどのような印象になるか、
いろいろ試してみようと思っています。

実際に飾った時に、場所によっての印象の差も
有りそうです。

工芸品的な作り方で、学ぶことも。

ちょっと楽しい作業でした。
これから、扇子職人さんの工房に送ります。
続きは、また追って投稿します。

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