かな料紙 - 小室かな料紙工房 -

伝統的製造方法で、書道用かな料紙を製作しています。このWebサイトでは、製作に係わる職人の立場から、かな料紙の作り方や種類など説明したいと思います。

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野毛(のげ)


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今日は野毛を作る工程をお話しようと思います。

写真が銀の野毛です。
これを竹筒に入れて紙の上に撒きます。

野毛を作る最初の作業は合わせ箔を作ることです。
合わせ箔は、二通りの方法があって

  熱によって合わせる・・・・・截金(きりかね)、大きめの切箔などに使います。
  ドーサによって合わせる・・・・・野毛を作るときに使います。

今回は、ドーサ液で張り合わせる方法で作ります。
ただ、この方法は一年の内でも限られた時期にしか作れないので
また改めて投稿したいと思います。

今回は、合わせ箔になっているところからです。

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この写真は、箔合わせをしてから短冊状に切った状態の箔一枚です。

ここまでで、全行程の9割です!
野毛作りは、箔合わせでほとんど質が決まってしまいます。

木の板に薄い和紙を張り、そこに一日一枚のペースでドーサ液で箔を
重ねて張っていきます。
基準は5枚です。
そのあと、和紙を取り除き短冊状に切ります。
厚く固くなった箔はこうして、竹のピンセットで持ち上げることが出来るくらいになります。

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このように短冊状のものを15枚重ねて、一度に切ります。

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これが野毛を切る台です。
竹を半分に割り、その曲面を利用して切ります。

セルロイドのシートを使っているのですが、これは刃ガ竹に直接あたらないために
使っています。合わせた箔も同じもので挟んであります。

色々なもの使ってみて、今のところこの材質が良いようです。ちょっと意外ですが。

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刃物は、和カミソリです。
これで、極細く切り刻んでいきます。

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切っているところです。
一回切ると15本の野毛が出来ます。

紙に撒いたときに、針のように真っ直ぐになるように。
そのために、このような工程が必要になります。

野毛を使った古筆と言えば、元永本古今集です。
今度、元永本の料紙を見る機会がありましたら、ぜひ注目してください。

コメント

  1. 徳橋恭子 2014.03.15

    おはようございます。
    これから合氣道の指導です。出かける前に素敵なお仕事を拝見させていただきました。
    野毛は存じておりましたが、こんな行程を経ているとは知りませんでした。
    やはりここでも段取りですね。
    私の知っている8分より更に9割。
    丁寧な作業ですね。私も今日一日心掛けます。

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      小室 久 2014.03.15

      徳橋様、ありがとうございます。
      朝、早いですね。

      合わせ箔はある程度の量を作っておいて
      使うだけ切る、というような感じで作業しています。
      段取り、大切ですね!

  2. 2014.03.15

    元永本に見かける野毛、このようにして作るのですね。
    日本の伝統の偉大さの部分を垣間見たような・・・

    いつも素晴らしいですね!!

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      小室 久 2014.03.15

      崖様、ありがとうございます。

      このような技法の形になるまで、先人の努力が思い起こされます。
      ありがたいことだと思います。

  3. hiropippi 2014.03.17

    おはようございます。作るのは限られた時期ということですが、何時の頃なのでしょうか?季節によってする作業があるのでしょうか?拝見しておりますと、どれひとつとして簡単なものがないお仕事で、改めて平安の人々の美というものに対する追求心に驚きをかんじます。そして、そのお仕事を受け継いでいらっしゃる小室さんにも!

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      小室 久 2014.03.18

      hiropippi様、ありがとうございます。
      五月の初め頃、または十月の終わり頃が良い時期です。
      膠を扱うには最適です。
      理想はあるのですが、現実には何時でも作れるようにはしています。
      エアコンで調整しながら作業しています。

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